「自分の貯金が他の人と比べて多いのか少ないのか」「老後に必要な資金はどれくらいなのか」――。27歳ともなると、こうした疑問や不安を抱く方は少なくありません。この記事では、27歳で600万円の貯金がどの程度なのか、そして将来に向けた資産形成の考え方について紹介します。
1.27歳の平均貯金額から考える「600万円の位置づけ」
単身(独身)の場合
- 平均値:金融広報中央委員会の調査によると、20代単身者の平均貯蓄額は約176万円
- 中央値:同調査による中央値は20万円
平均値・中央値ともに600万円と比較すると、かなり高い金額であることがわかります。
2人以上の世帯の場合
- 平均値:20代で2人以上の世帯の平均貯蓄額は約214万円
- 中央値:中央値は44万円
こちらも600万円との差は大きく、平均や中央値と比べて十分高い水準といえます。
2.年代別の貯金額との比較
下記は金融広報中央委員会の令和4年調査による、単身世帯・二人以上世帯の年代別平均値・中央値です。
年代 | 単身世帯 | 二人以上世帯 | ||
---|---|---|---|---|
平均値 | 中央値 | 平均値 | 中央値 | |
全国 | 871万円 | 100万円 | 1,291万円 | 400万円 |
20代 | 176万円 | 20万円 | 214万円 | 44万円 |
30代 | 494万円 | 75万円 | 526万円 | 200万円 |
40代 | 657万円 | 53万円 | 825万円 | 250万円 |
50代 | 1,048万円 | 53万円 | 1,253万円 | 350万円 |
60代 | 1,388万円 | 300万円 | 1,819万円 | 700万円 |
70代 | 1,433万円 | 485万円 | 1,905万円 | 800万円 |
これらと比較しても、27歳で600万円の貯金は平均以上であることがわかります。
とはいえ、貯金額が人によって異なるのは、ライフスタイル・収入・債務の有無・地域の差などさまざまな要素が影響するためです。あくまで目安として捉えましょう。
3.老後資金としてどのくらい必要か
一時期話題になった「老後2,000万円問題」からもわかるように、多くの方が老後資金に関心を持っています。一般的に、60歳以降の生活費としては以下の目安が挙げられています。
- 単身者:1,000万円
- 夫婦(2人世帯):2,000万円
あくまで平均的な目安であり、生活レベルや健康状態、年金額、住まいの状況などによって前後します。
4.27歳で600万円貯金がある場合、老後資金とのギャップは?
単身(独身)のケース
老後に1,000万円が必要と仮定すると、あと400万円が必要。
60歳までの残り約33年間で貯めるとしたら、年間12.1万円、月に1万円ほどの積立で達成可能。
2人世帯のケース
老後に2,000万円が必要と仮定すると、あと1,400万円が必要。
同じく60歳まで33年間で貯める場合、年間42.4万円、月に3.5万円ほどの積立が目安。
これだけ見ると、600万円をすでに持っているのは老後資金の準備として大きなアドバンテージです。ただし、将来の収入や支出の変化、物価上昇などを考慮する必要があります。
5.貯金をさらに増やすには?投資や資産運用を検討する
ここからは、現在の貯蓄を基盤にしてさらに資産を増やしていくためのポイントを詳しく見ていきましょう。
5-1.収入アップの戦略
- 転職やキャリアアップ
スキルアップや資格取得などを通じて転職することで年収が上がるケースは少なくありません。自分の市場価値を定期的に確認することも大切です。 - 副業・フリーランスの検討
本業に支障が出ない範囲で副業を行い、収入源を複数持つことでリスク分散にもつながります。興味や得意分野を活かした副業であれば、長く続けやすいでしょう。
5-2.支出の見直し・節約
- 固定費の削減
家賃や保険料、通信費などの固定費は、見直しによるインパクトが大きい項目です。家賃交渉や格安SIM、保険プランの再検討など、一度の見直しで長期的に支出を抑えることが可能です。 - 変動費の管理
外食費やレジャー費などは、家計簿やアプリで定期的にチェックし、予算を設定しましょう。無理のない範囲で削減することがポイントです。
5-3.投資や資産運用の選択肢
- つみたてNISAやiDeCoの活用
これらは長期投資に適した制度で、節税効果も期待できます。少額からでもコツコツと積み立てることで、複利の恩恵を受けやすくなります。 - 投資信託・株式・債券など
目標やリスク許容度に応じて投資商品を組み合わせることが重要です。分散投資を行うことでリスクを軽減し、長期的な資産成長を狙えます。 - ポイント投資やロボアドバイザー
投資に慣れていない初心者であれば、クレジットカードのポイント投資やロボアドバイザーを使うのも一つの手。ハードルを下げて少額から始められます。
5-4.ライフプランを踏まえた資産形成
結婚、マイホーム購入、子育てなど、大きなライフイベントの前後で必要なお金は変わります。逆算して必要資金を割り出し、運用と貯蓄のバランスをとることが大切です。ライフプラン表を作成して、いつ・どれくらいお金が必要になるかを把握しておくと、より具体的な目標設定ができます。
6.現在の資産額を客観的に評価するポイント
600万円という貯金額は、27歳としてはかなり高い水準といえますが、「具体的にどのような観点から客観的評価を行えばよいのか」という疑問もあるでしょう。以下のポイントを押さえると、自分の資産状況をより正確に把握できます。
- 年収との比較
貯金額を評価する際には、「現在の年収の何年分か」で考えるのも一つの方法です。たとえば、年収300万円なら2年分に相当します。年収の1~2年分の貯金を持っていると、失業や緊急時にも一定の備えがあると判断できます。 - 資産負債のバランス(純資産の把握)
住宅ローンや教育ローンなど、負債を含めた「純資産(資産-負債)」を見ることも大切です。資産が多くても負債も多ければ、実質的な純資産は少なくなる可能性があります。 - 流動性のある資産の比率
不動産や車などの資産は、現金化に時間がかかることもあります。すぐに現金として引き出せる貯金や投資信託などの「流動性のある資産」がどの程度あるかを把握しておくと、万が一のときに対処しやすくなります。 - 目標との乖離度
「老後に〇〇万円必要」「〇年後にマイホームを購入したい」など、具体的な目標を定めていれば、そこから逆算した進捗率を確認しましょう。たとえば、老後に2,000万円を目標とするなら、現在の600万円が全体の30%にあたるという計算ができます。 - リスク許容度との整合性
現金や預金だけで600万円を保有している場合、リスクは低いもののリターンも限定的です。一方で投資に偏りすぎると資産が目減りするリスクも。自分のリスク許容度に合った運用バランスを定期的に見直すことが重要です。
7.まとめ
- 27歳で600万円の貯金は、平均や中央値と比べても十分高い水準です。
- 老後資金の目安は単身で1,000万円、2人世帯で2,000万円などとされていますが、実際は収入や生活スタイルで大きく変わるため、あくまで参考値と考えましょう。
- 現時点で600万円を確保していることは大きな強みですが、物価上昇や仕事環境の変化なども踏まえ、長期的な視野で資産形成を進めることが大切です。
- 節約だけでなく、投資や運用を視野に入れた計画的な貯蓄を検討することで、老後の不安を軽減できるでしょう。
- 資産額を客観的に評価するためには、年収比・負債・流動性・目標との乖離など複数の視点から総合的に判断するのがおすすめです。
本記事が、27歳で600万円貯金をお持ちの方が将来の資産形成を考える際の一助となれば幸いです。ライフプランの明確化や運用の選択肢を広げることで、より安定した将来像を描いていきましょう。